レティアは首を傾げながらも、まるでそれを気にしていないように微笑む。 「んー? 小動物さんだと思うよぅ。大丈夫だって!」 無邪気な笑顔を浮かべつつそう言った瞬間、窓に影が映るのが見えた。
「……え!? わっ、なにこれ……。」 ルーシーが立ち上がり、警戒しながら窓の外を覗こうとする。その動きに合わせてレティアも後を追い、二人の気配が急に緊迫したものに変わる。
「わぁっ。誰かいるのかなぁ?」 レティアは軽い調子で話しながらも、ノクスたちの気配を探り始める。窓の外には何かが動いている気配があるが、その正体ははっきりと分からない。
その瞬間、ドアの外でノックの音が響いた。 『コンコン』
「え? ちょ、ちょっと……この時間に誰よ?」 ルーシーの声は少し上擦り、レティアにしがみつくように立ちすくむ。
レティアは手を空にかざし、虹色の球体を作り出してドアの方に向けた。そして、じっとドアを見つめながら声をかける。 「はぁーい。ど、どなたですかぁー?」
するとドアが静かに開き、そこには小さな動物が姿を現した。シャドウパピーズの小さな狼の一匹が家に戻ってきただけだと分かり、レティアは笑顔で言った。 「あ、シャドウパピーズ! びっくりさせないでよぅ~♪」
ルーシーは肩の力を抜き、大きく息を吐く。 「もう……心臓止まりそうだったわよ……。なんでこんな時間に戻ってくるのよ!」
レティアは悪戯っぽく笑いながらシャドウパピーズを撫で、影に戻るよう促した。緊張が解けた二人は、再び話しを続け明日の予定を話すことにした。 レティアがテーブルに地図を広げて話し始める。地図はレティアの家に長年保管されていた古いもので、少し色褪せているが、細かな地形や森の特徴が丁寧に描かれている。
「これ、すごーい! お父さんのパーティーが使ってたやつなの!」 レティアは目を輝かせながら地図を指でなぞり、嬉しそうにルーシーに説明をする。ルーシーはそれに興味深げに頷きながら地図に視線を落とした。
「ふむふむ……。ここは街道があるから、比較的安全そうね。でも、この辺りは……沼地が広がってるわね。湿地帯は、魔物が潜んでいることが多いわね。」 ルーシーは冷静に地図を見つめながら、慎重に意見を述べる。その声はやや固めだが、どこか頼りがいのある響きがした。
「じゃあ、ここは避けた方が良いね! でも、この森の奥に……なにかあるかも?」 レティアは森の中に描かれている小さな記号を指さし、興奮気味に声を弾ませる。
「なにか……ってなによ? あなた、ちゃんと考えてる?」 ルーシーが少し眉をひそめて聞くと、レティアは嬉しそうに答える。 「わかんないけど、面白そうだよぅ! お父さんも、この辺を探検したことがあるって話してたよ!」
「まあ……そうね。確かに探検の価値はありそうだわ。でも、ちゃんと準備が必要よ。罠とか道具とか、慎重に行動しないと。」 ルーシーが地図を見つめながら指示を出すように話すと、レティアは笑顔で頷きながら言った。 「うん! 任せてよぅ♪ 虹色の能力で道具を作ればいいもんっ!」
「……それ、知らないけど……やり過ぎないでよね。」 ルーシーは少し呆れた表情を見せるが、どこか安心した様子で地図を見続けた。
二人は時折笑い合いながら、次の冒険のルートを真剣に計画していく。ルーシーは道の安全性を調べ、レティアは楽しそうに次の目的地のイメージを膨らませる。そんな穏やかでありながら心躍る時間が流れる中、彼女たちの友情と冒険心はますます深まっていった。
二人はベッドに潜り話を続けていたが、気づいたら深い眠りに落ちていた。
翌朝、さっそく山に向けて出発をした。わたしの仕留めた獲物は昼食にと渡されてしまった。
山道を進む中、レティアとルーシーは木々の間から聞こえるかすかな音に気づいた。枝が揺れる音や、草むらをかき分けるような気配が近づいてくる。ルーシーが立ち止まり、弓矢を構えながら低い声で言った。 「……何かいるわね。気をつけて。」
「え? 動物さんかなぁ〜?」 レティアは無邪気に首を傾げながらも、周囲の気配を探るように目を凝らした。その瞬間、茂みの中から大きな鹿が姿を現した。立派な角を持つその鹿は、二人をじっと見つめている。
「わぁ……おーきいっ! こんな近くで見るの初めてだよぅ!」 レティアは目を輝かせながら鹿に近づこうとするが、ルーシーが慌てて手を伸ばして止めた。 「ちょっと待ちなさい! あんた、危ないでしょ! 鹿だって興奮したら突進してくるんだからっ!」
「えぇ……。でも、すっごく綺麗だよぅ……。」 レティアは少し残念そうに足を止めるが、その目は鹿から離れない。鹿はしばらく二人を観察するように立ち尽くしていたが、やがて静かに草むらの奥へと消えていった。
「ふぅ……無事で良かったわ。でも、あんな大きな鹿がいるなんて、この山もなかなかの自然なのね。魔物も出るかもしれないから、レティーもちゃんと警戒をしてよねっ」 ルーシーは弓を下ろし、少し安堵したように息をつき警戒を呼びかけた。